タックスヘイブンとは
タックスヘイブンは違法?
「タックスヘイブン」とは、直訳すると「税金(Tax)避難所(Haven)」という意味となり、法人税や所得税、相続税といった租税がゼロもしくは限りなくゼロに近い「租税回避地」「低価税地域」を指しています。
以上から、タックスヘイブンでは、日本などの税金が高い国でかかる法人税や源泉徴収税、相続税、贈与税といった租税がほとんどかかりません。そのため、節税対策として富裕層が資産を移転したり、多国籍企業が拠点を置いたりする先がタックスヘイブン、ということになります。脱税が違法であることはもちろんですが、タックスヘイブンについては、さまざまな注意点はあるものの各国の法律の範囲内で正当に行われている場合には違法ではありません。
節税として注目されているのが「タックスヘイブン」と「オフショア」。この二つにどのような違いがあるかご存知でしょうか?下記ページでは、それぞれの違いやメリットについて解説しています。是非ご参考ください。
タックスヘイブンが節税になる仕組み
なぜタックスヘイブンを通すと節税につながるのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
タックスヘイブンの地域や国は租税がゼロもしくは限りなくゼロに近い、という点が節税につながる大きなポイントとなってくるわけですが、主な税優遇にはさまざまな種類があります。
- 無税(タックスパラダイス)
タックスヘイブンの中でも税金が全額免除される地域を指しています。全く税金が課されることがない、また租税条約が締結されていない国や地域が「タックスパラダイス」に該当します。
- 特定の会社や事業活動に限り税の優遇措置(タックスリゾート)
例えば海運業のみ、金融業のみといったように、特定の業種に限定して税の優遇措置をとっている地域を指します。国や地域ごとに優遇される業種が異なります。
- 国外の源泉所得には優遇措置を行う(タックスシェルター)
タックスヘイブンのうち、国外の所得には課税しない地域を指します。日本でも、タックスシェルターを利用した租税回避行為が見受けられるケースが1990年ごろから見られるようになっています。その中では悪質と判断され、否認された例もあります。
- 低税率国
日本と比較して法人税が低い国を「低税率国」と読んでいます。日本の場合、期末の資本金または出資金が1億円以上の企業の場合、法人税率は「23.20%(2023年現在)」。この数値は世界的にも高い税率といえることから、低い法人税率の国や地域に本社を移転させる例などがあります。
このように、タックスヘイブンの種類にはいくつかありますが、いずれも租税がゼロ、または限りなく低いという点が特徴です。
タックスヘイブンにあたる国・地域
実際にタックスヘイブンの定義に当てはまる国や地域はどこなのかという点についてご紹介します。現在、50ほどの国や地域がタックスヘイブンにあたるとされていますが、具体的には下記のような国や地域がタックスヘイブンとされています。
- タックスパラダイス
バハマ・バミューダ・バーレーン・ケイマン諸島、ブリティッシュ・バージン・アイランド・マーシャル諸島、など
- タックスリゾート
イギリス・アイルランド・オランダ・ルクセンブルク・リヒテンシュタイン、など
- タックスシェルター
パナマ・マレーシア・リベリア・コスタリカ、など
- 法人税が低い国や地域(日本と比べて法人税が低い国や地域)
香港・マカオ・台湾・シンガポール・アイルランド・キプロス・モンテネグロ、など
タックスヘイブンのメリット
タックスヘイブンを利用するメリットは、下記の3点が考えられます。
国内と比較して税金の負担が軽く済む
国内で事業を行う場合と比較すると、タックスヘイブンを利用することによって税金の負担を抑えられるという点が大きなメリットとして挙げられます。
会社設立のための手続きが短く済む
タックスヘイブンに該当する国や地域の場合、会社設立の手続きが簡単であるという特徴があります。これは、タックスヘイブンが外国企業を自国に誘致するため。このことから、会社設立のための手続きにかかる期間が短く、また費用も抑えられるという点がメリットといえます。
タックスヘイブンの国の経済成長に寄与できる
タックスヘイブンを利用すると、その対象国の経済成長に寄与できるという点もメリットのひとつです。タックスヘイブンでは所得税や法人税の税負担を抑えていることから税収そのものは減るわけですが、企業を誘致することによって国にお金が集まる、といった面があります。
さらに、タックスヘイブンに法人を設立する際に必要な専門家報酬や登記手数料などの収入も得ることができます。このような理由から、タックスヘイブンに法人を設立すると、その国の経済成長に寄与することにつながります。
タックスヘイブンのデメリット
タックスヘイブンは、企業や個人にとってメリットがある一方、社会的な問題も存在していることを忘れてはいけません。具体的に挙げられている問題としては、資金の流れを把握するのが難しいために「脱税につながる恐れがある」といった点や、「マネーロンダリングに使用される恐れがある」などの社会的な問題などがあります。
脱税につながる恐れがある
タックスヘイブンの問題として挙げられているもののひとつに、「脱税につながる恐れがある」という点があります。これは、海外取引の調査が難しいため資金の流れを把握しにくいという点がその理由です。
マネーロンダリングに使用される恐れがある
「マネーロンダリングに使用される恐れがある」という点も問題点として挙げられています。マネーロンダリングとは、「資金洗浄」と訳され、例えば架空・別名義の口座で送金を繰り返すことや、株や債権の購入を行って資金の出どころを分からなくするといった方法が取られます。
特にタックスヘイブンの場合には個人情報が強く守られていることから、誰がどう資金を使用したかといった点が不透明です。そのため、悪意ある資産隠しにつながってしまうという可能性も否定できないというわけです。
タックスヘイブンは難しくなっている
タックスヘイブンを利用した租税回避が横行したことを背景として、日本では「CFC税制(タックスヘイブン対策税制または外国子会社合算税制ともいう)」と呼ばれる税制が施行されています。このように、現在は外国子会社を利用した租税回避を防止するための規制が強化されている状況であるといえます。
タックスヘイブン対策税制
日本で定められている「タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)」とは、租税を回避することを目的とした外国子会社の利益を日本の親会社の利益と合算して課税を行う、という制度です。この制度が適用された場合には、タックスヘイブンにおける利益も日本での課税対象となります。
ただし、この税制は租税回避行為を規制することを目的としており、具体的には事業の実態がないペーパーカンパニーが対象となります。そのため、タックスヘイブンでの所得全てが対象となるわけではありません。
OECD諸国の規制
OECD(経済協力開発機構)によって進められている規制として「ミニマムタックス」が挙げられます。これは、多国籍企業が税率の低い国に子会社を設立して最低税率を下回る水準での課税のみ負担している場合、本国の親会社などに上乗せで課税を行う、という制度になります。
この最低税率は15%となる見通しとなっており、法人税率が23.2%の日本の場合には全額是正は行えないものの、租税回避の動きを大きく規制すると考えられます。
タックスヘイブンを利用した節税方法
ここではタックスヘイブンを利用した節税を行う場合、具体的にどのような方法があるのかといった点について紹介します。
タックスヘイブンの地域に法人を設立する
まず考えられるのが、タックスヘイブンに移住して法人を設立して事業を行うという方法です。この方法を利用した場合には、前述したタックスヘイブン対策税制の適用外となります。そのため、多くの企業がタックスヘイブンといわれている地域で事業を営んでいますし、多くの富裕層も移住を行っています。
ただしこの方法が規制の対象外となるとはいえ、個人が移住するとなると決して簡単な方法ではありませんし、現地に会社を設立するといっても設立した先では業務を続けていくのが難しい可能性もあります。以上のことから、実現までのハードルは高い方法であるといえます。
タックスヘイブンの法人へ「贈与」
日本国内において個人が贈与を行った場合、受け取った側が一時所得として所得税や住民税を納めなければいけません。一時所得の場合においては50万円の特別控除を行った金額に2分の1を乗じた金額が総合課税の対象となりますので、納税しなければいけません。これは課税対象額が2分の1になることから、個人間で贈与するよりも節税が出来ます。
法人から贈与を行う場合、役員や従業員が相手であれば賞与になりますし、その他であれば寄附金扱いになります。従業員相手であれば全額損金算入になりますが役員相手であれば基本的には損金不算入で、寄附金は一定額までが損金算入になります。一方、贈与先がタックスヘイブンであれば法人税を負担することなく贈与が可能ですので、目減りすることなく資産を移すことが可能になります。
一時所得の枠を使った「生前贈与」
タックスヘイブンに設立した法人を経由させ、個人に対して生前贈与を行うことで、贈与税の課税を避けることも可能です。具体的にはタックスヘイブンにある法人に対して個人から資産を移転させ、その後に法人から親族などの贈与を行いたい相手に対して贈与を行います。この方法は日本国内において「寄附金」という扱いを受けますが、タックスヘイブンに設立した法人であれば法人課税は発生しません。
ここで注意しておきたいのが、「必ず法人から個人に資産を移す」という点です。個人から法人に資産を移しただけであればその法人の株式で相続が発生してしまいますので、この相続に課税が発生してしまいます。また、贈与を受けた個人に対しては贈与税がかかりませんが、一時所得の所得税などは発生しますので、この点も注意しておきましょう。
オフショア銀行の活用
オフショアとは「自分の国から離れた地域」を指す言葉ですので、オフショア銀行は「自分の国から離れた地域にある銀行」ということになります。タックスヘイブンを利用した節税方法としてはこのオフショア銀行の口座を使うという方法があり、銀行口座をタックスヘイブンに開設することで税制優遇を受けられます。
具体的にはその地域における税金が賦課されることになるため、日本国内の銀行よりも高い利率の適用を受けることが可能です。また、日本と海外では金融上の法制度が異なりますので、国内では取り扱いがないような金融商品を利用できるというメリットもあります。ただし手続きなどの場面においては言語の壁が存在しますので、語学力やコミュニケーション能力が必要になるでしょう。
海外に銀行口座を開設する際には、口座開設サポートのサービスをおすすめします。
口座開設者に対する助言やサポートサービスでは、海外銀行口座の開設から開設後のアフターフォローまでサポートしてくれるサービスもあります。
海外口座開設のサポートサービスでは、口座開設に必要な書類や手続きの流れ、注意点などに関する助言、翻訳作業などといったサポートを提供しています。また、サポートサービスによっては、口座開設後のアフターフォローまで対応しているので、初めて運用する方にとってもメリットがあります。
下記ページでは「日本にいながら海外銀行口座を開設する方法」や「海外口座開設サポート会社」について詳しく解説をしています。海外口座を正しく利用・運用していきたい方はぜひご参考ください。
ペーパーカンパニーを設立する
また過去に行われていたものとして、ペーパーカンパニー(外国子会社)を設立するという方法もあります。
この場合、タックスヘイブンに子会社としてペーパーカンパニーを設立した後、日本の本社から船舶や航空機、著作権や特許権などの資産を移転します。そして、日本の本社は船舶や飛行機のリース料や著作権・特許権のライセンス料を支払います。このようにして、日本の本社に対しタックスヘイブンにある子会社がサービス提供を行った、という名目で売上を立てるという形で日本の本社から送金します。この子会社の売上には日本の税率が適用されず現地の税制が適用されることから法人税を抑えられる、という流れになります。
しかし前述の通り、「タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)」などの規制が強化されていることから、現在はペーパーカンパニーを設立するという方法は利用できなくなってきています。
ペーパーカンパニーかどうかの判定方法
では、どのような企業が「ペーパーカンパニー」と判定されるのでしょうか。まずペーパーカンパニーとは、法人としての登記のみを行い事務所などが存在していない法人をいいますが、そのほかの条件としては「金融資産の保有を目的としており、事業を行っていない」「租税に関する情報の交換に非協力である国として挙げられている国に本店を置いている法人」といったものがあります。
またタックスヘイブン対策税制の対象になるかどうか、という点については「実際に事業を行っているか」という点が見られることになりますが、この判定を行うために「経済活動基準」が設けられています。経済活動基準の各項目は下記の通りとなっています。
- ①「事業基準」:主たる事業が株式の保有等、一定の事業でないこと
- ②「実態基準」:本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること
- ③「管理支配基準」:本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること
- ④「所在地国基準」:主として本店所在地国で主たる事業を行っていること
※下記以外の業種に適用 - ⑤「非関連者基準」:主として関連者以外の者と取引を行っていること
※卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業、航空機貸付業の場合に適用
以上の項目について、①〜③に該当していることに加え、④または⑤のいずれかに該当した場合にはタックスヘイブン対策税制の対象と判断されます。
タックスヘイブンに関する事件
ここまでタックスヘイブンの特徴を紹介しましたが、良い点ばかりではありません。タックスヘイブンの問題点の1つに、脱税に使われることが挙げられます。ここでは過去にあったタックスヘイブンに関する事件を紹介します。
パナマ文書事件
「パナマ文書」とは、パナマにある法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した膨大な量の内部文書を指します。この文書を南ドイツ新聞が匿名の人物から入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)とともに分析した上で、2016年5月に21万以上の法人と株主らを公表しました。ニューズウィーク日本版によると、このパナマ文書はモサック・フォンセカが40年にもわたって記録した1,100万件以上の文書データであり、世界各国の主要人物や富裕層がパナマ・バハマや英領バージン諸島などをはじめとしたタックスヘイブンを利用した金融取引により、資産を隠した可能性を指摘したものです。
内部リークによるものという可能性も報じられてはいますが、モサック・フォンセカによると「外部からのハッキングによる流出」であるとの説明が行われています。違法行為に対する関与も否定していましたが、最終的には経営者であるモサック氏・フォンセカ氏はともにパナマ検察当局に逮捕されています。多くのタックスヘイブン利用者に関する情報が流出したこの事件のあと、アイスランドのグンロイグソン元首相やパキスタンのナワズ・シャリフ元首相などが辞任することになったほか、日本国内においても国税当局の調査により総額31億円もの申告漏れがあったと報じられました。
ガーンジー島事件
イギリスの王室属領であるガーンジー島でもタックスヘイブンに関する事件がありました。この事件における原告は日本の法人であり、ガーンジー島に子会社を設立して税金を納付していました。ガーンジー島においては一定の要件を満たした外国資本法人の所得税は、税務当局の承認を受けることにより0%を超えて30%以下の割合の中から税率を選択して申請できるという制度があり、この子会社は26%の税率を選択して納税をしていました。
当時の日本では税率が25%以下の外国・地域においてタックスヘイブン対策税制(租税の負担が著しく低い外国法人において、我が国の法人または居住者により株式などの保有を通じて支配されているとみなされるものの「留保所得」を国内株主の持分に応じてその所得に加算して課税するもの)が適用されていたため26%という税率を選択していましたが、これに対して原告法人を所轄する税務署長はガーンジー島にある子会社の所得も合算して原告法人に対する課税処分を行っています。
この事件の裁判は最高裁まで行っており、結果としては納税者である原告法人が全面的に勝訴しています。ガーンジーの法令に基づいて子会社の所得を課税標準として課された税であり、外国法人税に該当することが否定できないという結論からこのような結果になっています。
みずほ銀行vs国税
みずほ銀行では2008年にリーマン・ショックが起こってから、タックスヘイブンのイギリス領ケイマン諸島に複数のSPC(特別目的会社)を設立しました。このSPCが有価証券(優先出資証券)を発行し投資家から約3,600億円を集めるというスキームになっており、みずほ銀行における自己資本を増強するという目的で実施されました。集めた資金は2015年時点で全て返還されましたが、その過程でSPCに利益が残ったことが争点になっていました。
このスキーム自体は他行においても実施されているものであり、みずほ銀行としては「利益はみずほ銀行に帰属していない」として課税所得0円で申告を行いましたが、東京国税局は「SPCはみずほ銀行が100%出資しているため、利益も銀行本体に合算すべき」と指摘しました。利益で約84億円もの申告漏れ指摘となり、過少申告加算税を含めて約20億円もの追徴課税処分を行いました。一審においては「目的・実態の有無を適用除外として規定しておらず、課税処分は適法」としてみずほ銀行の請求を棄却しましたが、二審では「目的・実態が認められず課税処分は税制の趣旨や理念に反して違法」との判決でみずほ銀行の逆転勝訴となりました。
しかし、その後の最高裁判決によると、裁判官4人全員一致の結論として二審の判決を破棄・みずほ銀行側の敗訴となっています。
日産自動車へのタックスヘイブン対策税制適用
日産自動車がメキシコに設立した子会社は、自動車購入資金を貸し付けるクレジット契約を顧客へ提供し、契約時に生命保険や失業保険への加入を義務づけていました。特に指定がなければ日産グループ外の保険会社へ加入させていましたが、この法人が負うリスクの70%を税負担の軽いイギリス領バミューダ諸島にある別の日産子会社が「再保険」として引き受け、収入を得ていました。
国税局はこのスキームに対して税負担回避を阻止する「タックスヘイブン税制」を適用し、この子会社に入る再保険料の収入は日産の所得と合算すべきであると判断し、2017年3月期に約250億円もの申告漏れを指摘しました。ただし、この「タックスヘイブン税制」には「関連会社以外の者のための保険の保険料収入は所得から外してもいい」との規定があるとして、課税は誤りだと訴えており、一審では原告である日産の請求は棄却されていましたが、二審では一転し約50億円の課税を取り消すという判決が下されています。
デンソーの12億円課税取り消し
当時のデンソーは35の国と地域で事業展開を行っており、世界に200以上のグループ企業を有していました。そんな中、ASEAN域内での集中生産・相互補完体制の円滑化を図るために各拠点間の事業活動調整・サポートを目的とし、シンガポールに地域統括センター法人を設立しました。さらにその後エリア内での統括力を高めることを目的とした別法人を設立しましたが、この法人がグループ内の株式を現物出資して設立されたものであることから「主たる事業が株式保有でありタックスヘイブン対策税制の適用となる」と指摘を受け、更正処分などを受けることとなります。
しかし納税者であるデンソーは「あくまでも対象会社は地域の統括事業を担っていることからタックスヘイブン対策税制の適用にはならない」と主張を行い、約12億円の課税を認めた二審判決を破棄し最高裁で逆転勝訴を納めました。判決理由としては「子会社には東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の事業を効率化する目的があり、活動に経済合理性があった」と指摘をし、「財務や物流改善などの業務は多岐にわたり、相当の規模と実体があった」ということで課税処分は違法と結論づけています。
タックスヘイブンへの投資や利益は伸びている?
タックスヘイブンへの海外直接投資が伸びている
グローバルな海外直接投資において、タックスヘイブンに対する投資の金額・割合は増加しており、対内直接投資残高をみると2017年には8.4兆ドル(約950兆円)となっており、グローバルな直接投資残高は33.8兆ドル(約3,800兆円)の25%にも達しています。タックスヘイブン外に対する投資も伸びてはいますが、全体に占めるタックスヘイブン国に対する投資割合としては2000年から2017年にかけて大きく増加している状況です。ただし、タックスヘイブン国におけるGDPは2.6兆ドルとなっており、同年におけるグローバルなGDP80.5兆ドルの3%程度に留まっています。
タックスヘイブン関連会社の利益の伸び
商務省経済分析局のデータに基づくと、2017年における米国多国籍企業は少なくとも2,300億ドル(25.8兆円)をタックスヘイブンの関連会社に計上していると推計されています。なお、対象となるタックスヘイブンとしてはシンガポールやアイルランド、スイス、オランダ、ルクセンブルク、ケイマン諸島、バミューダが挙げられます。また、米国多国籍企業におけるタックスヘイブン関連会社の税引前利益の伸びは、非タックスヘイブンの関連会社における利益と比べて常に高い水準を維持しています。
デジタルエコノミーに対する課税問題
EU(欧州委員会)の資料によると、一般の企業は最大3%程度しか売上が伸びていないのに対し、デジタル企業は14%も伸ばしている状況です。しかし従来型の産業企業が平均23.2%もの税を支払っているのに対しデジタル企業は半分以下の9.5%程度しか納税していないというデータが出ています。大手IT企業であるアップルのクックCEOが2013年の米議会上院の公聴会に提出した資料によると、アイルランドで長年にわたり2%ないしそれ以下しか税負担をしていなかったことを認めているなど、このデータや指摘の通りデジタル企業の税負担は低くなっているという事実があります。
アップルやグーグル・フェイスブックはアイルランド、アマゾンはルクセンブルクといった場所に子会社を有しており、租税政策に影響力を行使ながら税優遇を受けていると言われています。この傾向はタックスヘイブン国に対する投資の推移を見ると顕著に数字へ表れており、2005年と2017年対比でいずれの国も大きく対内直接投資残高を伸ばしている状況です。同じくタックスヘイブン子会社の利益も大きく伸ばしており、「租税回避の目的があるかどうかはさておき、子会社への利益移転があると推察される」と評されています。
by
合同会社PPS
「海外銀行口座開設」のプロフェッショナル
- 合同会社PPS
- 吉岩勇紀代表
2007年創業、これまで2,500人以上の海外銀行の口座開設をサポート。独自の人脈と豊富な知識で海外銀行とのコネクションを築く。現在はプライベートバンク(モナコ)・アクレダ銀行(カンボジア)・JDB銀行(ラオス)をはじめ、計8銀行の口座開設をサポートしている。