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税金滞納者の海外口座資産を差し押さえできるのか?

令和5年8月に国税庁が公表したデータによると、「令和4年度租税滞納状況」は8949億円。令和4年度に新規で発生した滞納額はピーク時(平成4年度)の約4割と大幅に減少してはいるものの、金額だけに目を向ければ、依然として税金の滞納は巨額であることに変わりありません(※)。

さて、税金を滞納し続ければ、やがて滞納者の資産は差し押さえられる形になりますが、税務署や国税局には海外にある資産も差し押さえる権限があるのでしょうか? 当ページでは、税金滞納の差し押さえに関する一般論、海外にある資産の差し押さえ、税務署・国税局による税金の徴収・差し押さえ権限の範囲などについて解説しています。

※参照:国税庁|令和4年度租税滞納状況の概要
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sozei_taino/pdf/sozei_taino.pdf

税金の滞納と差し押さえに関する一般論

まずは、国税滞納による差し押さえの一般論について確認しておきましょう。

税金滞納から差し押さえまで

税金を滞納した状態のまま一定期間が経過すると、税務署や自治体から督促状が届きます。滞納している税金が国税の場合には、滞納が始まってから50日以内に督促状が届くことになります。 督促状が届いたら速やかに納税するのが原則ですが、資金不足等の理由で、すぐに納税できない人も多いでしょう。 もし督促状が届いて10日以内に納税できない場合、税務署は滞納者の資産を差し押さえられる旨が法律で定められています。納税が難しい場合には、速やかに税務署へ出頭して相談すべきでしょう。

税務署には強制徴収や差し押さえの自力執行権が認められている

一般的な民事における債権の場合、未返済者に対する強制徴収や差し押さえを行うためには、裁判所等の司法判断を経由しなければなりません。 一方で税金の滞納については、税務署や自治体は未納者に対して、司法判断を経由せずに強制徴収・差し押さえを行える権限を有しています。この権限を自力執行権と言います。 司法判断が必要ないということは、税務署や自治体の判断で速やかに滞納者へ差し押さえを実行できる、ということでもあります。

税務署には税金滞納者の資産を調査する権限がある

国税徴収法第141・142条では、滞納者に対する処分のためにその財産を調査する必要があると判断された場合、税務署が滞納者の財産を調査できると定められています。 もし国税を滞納した場合、滞納者は税務署から次のような調査を受ける可能性があります。

  • 銀行口座にある預貯金
  • 不動産・動産・債権などの個人資産
  • 生命保険などの契約状況
  • 収入状況
  • 戸籍・住民票などの異動状況
  • 勤務先への問い合わせ
  • 取引先への問い合わせ、など

自分の預貯金や収入状況を調査されるだけではなく、勤務先や取引先への問い合わせが入るケースもある点に注意しないところ。社会的信用が失墜し、以後の仕事に影響が及ぶ恐れもあるからです。

海外にある財産は差し押さえできるのか?

上記の通り、税務署の調査項目の中には滞納者自身の資産状況(預貯金、不動産など)がありますが、税務署は滞納者が海外に保有している資産も調べることができるのでしょうか?ひいては、もし海外に滞納者の資産が存在した場合、税務署はその資産を差し押さえできるのでしょうか?

原則論としては海外資産を差し押さえられないが…

税務署が差し押さえられる資産は、法律で「法施行地域内にある資産」と規定されています。法施行地域内とは、言い換えれば国内のこと。国内にある資産であれば、税務署の判断により問題なく差し押さえが可能という決まりです。 これを逆にとらえれば、税金滞納者が海外に有している資産は差し押さえできないということ。海外は日本の法施行地域ではないので、日本国の法的な力が及ばないということになります。 この原則論に従えば、差し押さえの迫る税金滞納者は、資産を海外口座などへ移動させることで差し押さえを逃れることが可能。しなしながら実際には「徴収共助」という国同士の取り決めにより、多くの国々では国境をまたいで未納者の資産を差し押さえられることになっています。

徴収共助とは

徴収共助とは、国境を超えて各国の税務当局が、互いに相手国の租税を徴収できるという枠組みのこと。2013年10月から発効した制度で、欧州を中心に、日本を含めて多くの国が徴収共助の枠組みに参加しています。 発効した当初、日本から海外への要請件数は3件のみでしたが、2018年7月からの1年間で13件、2019年7月からの1年間で29件と、その要請数が着々と増加。徴収共助の国際連携は、今後もますます強化されていく見通しです。差し押さえを回避するために海外へ資産を移動させる手法は、今や実現不可能になりつつあります

実際に徴収共助で海外資産が差し押さえられた事例もある

徴収共助により、実際に巨額の海外資産が差し押さえられた事例があります。 あるオーストラリア人が、日本に住む親から数十億円もの贈与を受けたものの、本人は贈与税を納付しませんでした。 そこで日本の税務当局は、まず日本にある本人の財産を差し押さえ。次いで、徴収共助制度に基づいてオーストラリア税務当局の協力を仰ぎ、本人がオーストラリアに持つ8億円の資産を差し押さえました。当時、この事例はニュースでも大きく話題となり、徴収共助の名が一気に国内へ広がるきっかけにもなりました。 ただし、この事例が発生するまでに日本が海外へ行った徴収共助要請の合計額は53億円。うち、実際に徴収できた金額はわずか9億円。そのうち8億円が当事例となるため、まだまだ制度としては浸透しきれていないという声も聞かれています。

税務署の税金徴収・滞納処分の権限範囲について

税務署や国税局の権限範囲は、原則として国内のみになりますが、徴収共助の枠組みにより外国の協力も得られつつある状態になりました。 ここで改めて、税務署や国税局の国税徴収に関する権限範囲をおさらいしておきましょう。

原則として国税の徴収権限は所轄税務署・国税局が持つ

原則として国税の徴収は、納税者の居住地や本店所在地を管轄する税務署の権限範囲となります。ただし、大規模納税者等については、税務署を指導監督する国税局が自ら徴収を行うこともあります。

国税の徴収権限の引継ぎ

大口の滞納案件や複雑な滞納案件については、所轄の税務署長からの要請により、国税局が徴収を引き継げることとなっています(国税通則法第43条3項)。 また、税務署長が必要ありと判断した場合には、他の税務署へ国税の徴収を引き継がせることもできます(国税通則法第43条4項)。他の税務署長への徴収引継ぎについては、税務署における事務効率の向上、および納税者における利便性の向上が目的です。 なお、徴収権限の引継ぎが行われた場合には、納税者に対してその旨が通知されます。

滞納処分の執行機関

国税の滞納に対する未納者への処分(差し押さえなど)は、所轄の税務署長と税務署、および国税局長と国税局所属の徴収職員となります(国税通則法第43条)。

滞納処分の執行の引継ぎ

税務署長または国税局長は、滞納処分(差し押さえなど)すべき財産がその管轄区域外にある際、その財産の所在地を管轄する税務署長または国税局長に滞納処分(差し押さえ)の執行を引き継ぐことができます(国税徴収法第182条2項)。処分内容は、差し押さえのほかにも参加差し押さえ、交付要求、換価、換価代金の配当等があります。 また税務署長は、差し押さえ財産や参加差し押さえ不動産を換価する際に必要があると判断した場合、他の税務署長や国税局長にその処分を引き継ぐことが可能です(国税徴収法第182条3項)。 なお、滞納処分執行の引継ぎが行われた場合には、納税者に対してその旨が通知されます。

徴収共助

国税滞納による差し押さえ対象となる資産が海外に存在する場合、国際的な徴収共助の枠組みに応じ、外国の税務当局に要請して差し押さえを執行できます。 なお、徴収共助の条約に参加している国は、日本を含めて124か国(2020年6月1日現在)。多くの国が参加しているものの、全ての国が参加しているわけではありません。

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「海外銀行口座開設」のプロフェッショナル

合同会社PPS吉岩勇紀代表
合同会社PPS
吉岩勇紀代表

2007年創業、これまで2,500人以上の海外銀行の口座開設をサポート。独自の人脈と豊富な知識で海外銀行とのコネクションを築く。現在はプライベートバンク(モナコ)・アクレダ銀行(カンボジア)・JDB銀行(ラオス)をはじめ、計8銀行の口座開設をサポートしている。

※2023年4月20日調査時点